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【『都市迷宮ロロト』あとがき】

お読み頂きありがとうございます。
このお話は、読後感がひっかかると言うか、後味の悪さを感じる方が
いらっしゃるかもと思ったので、補足を書かせて頂く事にしました。
あくまで<楽しめる漫画><ハラハラドキドキ>を目指して書いたものなので、
以下のちょっとマジメな後書は、読みたい方だけ、さらりと読んで下さい。


私の心配は、リキとエイラは怒りを持って当然であり、その『怒り』が解決されないまま
物語が終わってしまう事に不満を感じる方がいるかも、という点です。

例えば『不当な差別をしないで欲しい』という前向きな要望をリキが持っているなら
それは解決の方法があるのですが、憎しみに捕われたリキが望むのは『報復』であり、
しかも漠然と『ロロトの人々』に向けられていて、誰かに自分の受けた扱いを訴えて
謝罪を受ける事のできるような類いでもありません。
その行為によって事態を良くする、のではなく、相手を傷つけるためだけの憎悪。
むしろ『報復』行為によってリキ自身も深く精神的に傷つくような。
だから、彼女の怒りがエイラへの思いやりによって浄化される事で、
この話の答えとしました。

エイラに関しても、不幸な事に彼女の身に起きた事は100年も昔のことになってしまって、
直接憎むべき相手はすでにどこにもいないわけです。
また、町の返還を求めるにしても、クテット一族の仲間ももういない、
エイラとリキの力じゃ、大都市ロロトの大人たちにかなう訳が無い。話の中でも出ているように
半分武力で脅されながら、幾分かの賠償金を受け取るのがいい所だと思います。
もしかしたら、いつかエイラが大人になって、ロロトと対等に交渉する力を持って、
正面から町を取り戻す為に戦う事はあるかもしれません。
ただ、それはまた別のお話になるので、この話では、過去から続く憎しみから一旦解き放たれ、
強制的に眠らされていた人生の続きを始める所で一つの区切りとしています。


自分に対する不当な扱い、人格の否定、人からいわれの無い悪意を受ける事への
憎しみや怒りは、多かれ少なかれ誰もに覚えがあると思います。
その強い負の力が、時に感情の持ち主をを押しつぶし、
憎しみでちゃんと物事が見えなくなり、余計に苦しめます。
この漫画は、その負の力に打ち勝つにはどうしたらいいのか、
私自身の為に答えを模索した一つの結果です。

楽しみとして描いた漫画で、ここまでシリアスな語りをする事もないとは
思うのですが、念のため私の考えを記しておきました。
拙い文章で申し訳ありません。

内容の前に、まず背景が歪んでるよとか(汗)多々つっこみ所は存在するかと思いますが
ご意見・ご感想頂ければ非常にありがたいです。

あと今回は恋愛要素が入らない、わたくし初の友情百合でした。
はっきりとした恋愛でなくても、女の子同士の強い結びつきも百合としてOKらしいので
2人の深い絆に、萌えて頂ければ本望です。
2007.11.3

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